いきなりだが、会社で怒られている人がいるとして、
次の内どちらの方が印象がいいだろうか。
A:すみません。しかし、その期間だと、どうしても結果を出すのは難しいです。
もう少し、プロジェクト期間を長く見積もるべきでした。
B:確かに我々のプロジェクトは、まだ大成功とは言えないです。
私感ではあと2週間あれば好転すると考えてますが、
このままプロジェクトは継続されるべきでしょうか。
きっと多くの人がBの方を好印象と答えるだろうし、
これからの話しがうまく進むのもBだろう。
Bの中にはちょっとした弁論術のテクニックが盛り込んである。
このように、弁論術は、普段の会話の中に取り込むことで、話を円滑にできたり、
相手との関係を修復する力を持っている。
今回は、弁論術のススメと題して、触りだけでも、紹介していきたい。
1. What’s 弁論術
弁論術は、またの名を修辞学といい、一般には文字を飾り付ける技術として認識されていることもある。
確かに、比喩等を駆使して優美な論説を行い、聴衆に向け、自分が十分な教養を持っていることを示すということは、弁論術の一側面である。
しかしながら、古代ギリシアのアリストテレスは、”聴衆を魅了・説得する技術”
としての弁論術をその著書”Ars Rhetorica”の中で論じている。
彼の師のプラトンは、些か批判的だったようだが、
のちの時代では認められ、リーダーシップに欠かせない技術として研究されてきた。
現代になり、昔ほど弁論術は意識されなくなってきたが、世界のリーダーたちはこの力を揮って人々の関心を集めている。
オバマ前大統領は、この弁論術の力を非常に上手に使っている。
1期目の就任演説の際に、次のような言葉を残している。
“私たちは自分の生き方について謝罪はしませんし、それを守ることに何のためらいもありません。テロを起こしたり、罪のない者を殺害したりすることで目的を果たそうとする人たちに向けて、こう断言します。私たちの精神は強く、決して打ち砕かれることはない、と。あなた方に、私たちを倒すことはできません。私たちがあなた方を打ち負かすからです。”
この言葉を読んで、私はアメリカ国民ではないが、何かしらの力が湧いてくるのを感じる。
文字通りに受け取ると、これはテロリストに向けられた言葉であるが、
本当にターゲットとしているのは聴衆である。
テロリストを共通の敵とし、国民を一致団結させ、自分は断固たる意思でテロリストと戦うという姿勢を強調しているのである。
このように弁論術は、人々を魅了し、無名の新人政治家を大国のリーダーにするほどの力を持っているのである。
2. 興味を惹かれたあなたに
この記事を読んで、ちょっとでも弁論術に興味を持っていただいたなら、幸いだ。
そんなあなたにおすすめの書籍を紹介したい。
ジェイ・ハインリックス著 ”THE RHETORIC”
この本を書店で見かけた方もいるかもしれない。
私もその一人で、以前はアリストテレス著の”弁論術”を読んで、
その難解さに一度挫折してしまっていた。
しかし、この著者は様々な例(歴代大統領や著名人、時には私生活での場面)を
交えながら、どのようなテクニックが用いられているのをか解説してくれているので
非常にわかりやすい。
前項のオバマ前大統領の演説も、この書籍に掲載されている。
また、シチュエーションごとに有用なテクニックをまとめてくれているので、
あとで、見返してどのような点に注意すればよいのかをひと目で復習することができる。
3. 最後に
今回は、弁論術について紹介した。
この技術は非常に興味深いもので、これからも続けて学んでいく必要があると感じている。
今回は具体的なテクニックについては触れていないが、今後の記事で私の復習も兼ねて、少しづつ取り上げていくつもりだ。
更に、詳しく知りたいという人は、上記の書籍を読んでみるといいかもしれない。
きっと、あなたの人生を豊かにしてくれる知識が得られるはずである。