近年、急発展を遂げるVR技術
ゲーム業界、以外にも医療や教育といった様々な分野で活躍が期待されています
今回は、VR技術がボードゲームにおいて、どのような影響を及ぼすのかを
プレイヤーとクリエイターの両方の視点から考えてみます
VRの発展
近年、PlayStation VR やOculus Rift といったバーチャルリアリティ空間でゲームをプレイするためのVRデバイスが登場し、2016年はVR元年と呼ばれ、さらなる盛り上がりを見せています
VRヘッドセットメーカーOculus社のチーフサイエンティストであるエイブラッシュ氏は、2016年10月の基調講演で5年後のVRの未来について語っています
氏は今後の課題として、主にビジュアル面とユーザーの操作性の改善があるとして、それらがクリアされた後に実現されるであろう”Augmented VR”という概念を提唱しています
この”Augmented VR”の概念とは、”任意のオブジェクトを現実と仮想で共有できる考え”というものであり、最新技術を組み合わせることでバーチャルワークスペース上で多人数と作業を共有することができるようになるとしています
このように、VR技術の進展は非常に活発で、将来的にはVR空間でアバターを介してボードゲームをプレイする新しいスタイルが生まれるのではないでしょうか
VR空間で使用するアバターも、最近話題になっているバーチャルYouTuberのように身近になっています。全身をモーションキャプチャーする必要はなく、ボードゲームの多くは表情と手の動きさえ取り込めればプレイできるため、技術的にも困難ではないと考えられます
ボードゲームへの応用
VRを組み込んだボードゲームはすでに販売されていて、ギフトテンインダストリから世界初のVRボードゲーム”アニュビスの仮面”が出されています
“アニュビスの仮面”は、協力型のゲームで一人がVRゴーグルをつけ、仲間に見える風景を伝え、VR空間上に広がる迷路を現実のタイルやチップ上で完成させ、脱出を目指すゲームです
“アニュビスの仮面”に使われているVR技術は、3D映像技術や装着者の向きを感知する技術といったシンプルなものですが、必要なVRデバイスがスマートフォンのみであり、手軽にゲームを楽しむことができます
また、VRデバイスの弱点である”一度に一人しか使用できない”、”長く使用すると疲れる”といったことも、ゲームデザイン上の制約としてうまく組み込まれています
ギフトテンインダストリは”アニュビスの仮面”以外にもVRやARを利用したゲームを考案しており、今後も様々なところから新技術と融合したボードゲームが産み出されるでしょう
プレイヤーへのメリット
以下の3つがVR技術の発展によるプレイヤーへのメリットと考えられます
- 仲間が得やすい
- レンタル制度により、様々なゲームが遊べる
- インストが容易
それぞれ、順に説明していきます
- 仲間が得やすい
普段ボードゲームをプレイする上で最も悩ましいことの一つは一緒にゲームをプレイする友人がなかなか得にくいということです
私の経験上、ボードゲームを薦めると多くの人は楽しんで遊んでくれるのですが、やはりどうしても自分の住んでいる土地や生活スタイル等で距離的あるいは時間的な制限により、あまり多くの人とはゲームをプレイすることはできません
また、ゲームの熟練度が異なる人同士では、熟練した人が一方的に勝ってしまうため、なかなか全員が楽しむことが難しくなってしまいます
そこでVRを利用することによって、好きな時間に自室にいながら世界中の様々なレベルの人と遊ぶことができるようになります
また、プレイログを残せるようになるため、自身のプレイをあとから見直したり、うまいプレイヤーのプレイを参考にできるようになるため、ゲームをプレイする人全体の質を高め、より高いレベルでゲームを楽しめるようになります
- レンタル制度により、様々なゲームが遊べる
近年、日本のボードゲーム市場が盛り上がりを見せる中、多くのボードゲームが流通しています
自分にあったボードゲームを見つけたいとき、インターネット上のレビューを見るのもいいですが、やっぱり実際にプレイしてみたほうがいいですよね
しかし、ボードゲームを一つ買うのにも、ものによっては結構な値段がするため、なかなか何度も遊びたいと思えるゲームを見つけるのに苦労するかもしれません
このような悩みを解決するために、VRではゲームのレンタル制度ができると考えています
1プレイを安価に遊ぶことでより多くのボードゲームに触れることができるため、自分が本当に気に入ったゲームのみを実際に購入するということができるようになります - インストが容易
はじめてのゲームに触れる際、プレイヤーは説明書を読む必要があります
いかにプレイヤーにわかりやすくゲーム内容を伝えるかというところはクリエイターの腕の見せどころですが、やはりプレイヤーにとっては少々面倒なところです
この煩雑さを軽減するためにVRを利用することで、ゲーム説明を映像や音声を用いたチュートリアルによって伝えることができ、プレイヤーは短時間でルールを理解できようになります
クリエイターへのメリット
次にクリエイターへのメリットは以下のようです
- テストプレイを楽にまわせる
- 値段を抑えることができる
- 司会などをCPUに任せることができる
- リアルでは使いづらい素材を使える
順を追って説明をします
- テストプレイを楽にまわせる
ボードゲームの製作には、テストプレイを欠かすことはできません
テストプレイを繰り返すことで、構想段階では気づけなかったルール上の欠陥や、さらにゲームを面白くするようなアイデアを発見でき、ゲームの完成度を高めることができます
そのため、理想を言えば、テストの段階から多くの人に遊んでもらい、多くの意見をいただくのがいいと思います
VR上で、テストプレイヤーを募ることで、テストプレイを大量にまわすことが容易になり、自分たちとはまた違った視点からのフィードバックを得ることができるため、ゲーム品質の向上が期待できます
- 値段を抑えることができる
VRでは、ゲームをデータとして販売するため、材料費や輸送費を省くことができ、低価格でユーザーに提供ができるようになります
オリジナルのコンポーネントを使用する場合は、最初のモデリングとデザインにコストがかかってしまいますが、一度作ってしまえば複製が可能であるため、その後はほぼノーコストで販売することができます
- 司会などをCPUに任せることができる
昨今、爆発的人気を誇るようになった人狼系のゲームですが、その元となった”汝は人狼なりや”は、進行のために司会が必要です
司会の立ち位置も面白いとは思うのですが、司会はいわば観戦者であり、本質的にはゲームに参加してはいません
この問題を解決したものが、スマートフォンアプリを利用した人狼ゲームであったり、一回の投票でゲームが終わるワンナイト人狼で、手軽に人狼ゲームを遊べるようになりましたが、司会を作らないというのは一種のゲーム製作上の枷となっています
このゲームの進行には必要だが、参加はせず、機械的な処理で十分な煩雑な役をCPUに任せることができるようになれば、ゲーム製作の幅を今まで以上に広げることができ、新しいスタイルのゲームを作れるようになるのではないでしょうか
- リアルでは、使いづらい素材を使える
多くのボードゲームでは、コンポーネントの素材として、紙や木、プラスチックがよく使われています
なかには”バルバロッサ”のように粘土など変わった素材を使用したゲームもありますが、耐久性や材料費等を考えると使える素材は限られてきます
しかしながら、VRでは、耐久性を考慮する必要がないため、液体といったリアルでは他のコンポーネントを損傷させてしまう恐れのあるものやコンポーネントの不可逆的な使い方ができるようになります
最後に
いかがだったでしょうか
VR技術の発展は、プレイヤーとクリエイターの双方に多くの便益をもたらすものとなるでしょう
そうなった時に、どのような革新的なゲームが生まれるのか、今から楽しみにしています
皆さんの思い描く未来のゲームはどのようなものでしょうか